菊井鋏研究所

和歌山の理美容シザーメーカー、キクイシザースのブログです。

コバルトってどんな金属?という「そもそも論」的な話

和歌山で理美容ハサミを作っているキクイシザースです。

 

「コバルトってどんな金属?」

以前もコバルトシザーのこだわりについて記事にしましたが…

www.kikuiscissors.net

最近もっとくわしく知りたいというお問合せも多いので、そもそもCoってどういうものか?

より「金属」としての特徴にフォーカスして(マニアックな内容で)紹介します。

 

元素番号27 Co

f:id:kikuiscissors:20190329081508j:plain

コバルトの語源はドイツ語で地の妖精を意味する「コボート」

昔から冶金が難しく、妖精が困らせるために作った金属、ということで名付けられたそうです。

 

そんな「コバルト」という元素そもそもの大きな特徴として、

鉄(Fe)より錆びにくく、酸や塩基にも強い

という性質があります。

産出量が限られるレアメタル(希少金属)ですが、その性質を利用して

様々な合金の添加物として使用されています。

(コバルト単体では使われず、金属の耐食・耐熱・耐磨耗性を高める添加物として利用されます)

なかなか供給が安定しない上に最近ではスマホや自動車のバッテリーでも需要が増えているため、

原料価格も高騰し、国際相場はこの2年間で3倍というデータも出ています。

 

ステンレス添加物としてのコバルト

そもそもステンレスとは…ざっくりと言うと

鉄Feをベースに、クロムCrや炭素Cを混ぜた合金

のことをステンレスと総称します。

そしてこのステンレスは添加物を加えることで、用途に応じたキャラクターを持たせる事ができます。

中でも、ステンレスにコバルトCoを添加する事で、刃物鋼に必要な

靭性(粘り強さ)耐食性(錆びづらさ)

を高めることができます。

コバルトを添加したステンレスは、切れ味・耐久性のバランスが取れた刃物に仕上げることが出来ます。

いま日本のハサミメーカーが作っている上級モデルのシザーはほとんどがコバルトが添加されたステンレスです。

コバルト添加ステンレスはいい鋼材だと思いますが、鉄Feが主成分なので、使用環境によってはサビる事があります。

 

キクイの「コバルトシザー」は主成分がコバルト!

キクイでは鉄を含まない、Coが主成分のコバルト基合金のハサミだけをコバルトシザーと呼んでいます。

f:id:kikuiscissors:20190329084116j:plain

コバルト基合金とは、コバルトCoをベースにクロムやタングステンを添加した合金。

最大の特徴は

ステンレスよりはるかに優れた耐食性

にあります。

キクイシザースではコバルトシザーを世界で初めて開発して以来、40年以上の実績がありますが、

理美容室の環境においてもコバルト基合金は絶対にサビる事がない金属と言うことが出来ます。

 

もうひとつ、ハサミにとって大切な耐摩耗性(滑らかさ)もコバルト基合金の特徴。

ハサミは構造上、開閉の度に刃と刃がお互いに擦れ合うため、硬ければいいというモノではありません。

むしろ、刃への負荷を減らすためには耐摩耗性(滑らかさ)が重要だとキクイは考えます。

コバルト基合金は摩擦係数が小さいため、開閉による刃の負担が軽減し切れ味が長持ちします。

 

コバルト基合金か コバルト添加ステンレスか?

僕たちは理美容ハサミ用鋼材としてはコバルト基合金のメリット(耐食性・耐摩耗性)が大きいと思っています。

小さなメーカーのいち商品が、40年以上たくさんの方に愛用されてきたのも評価の証と自負しています。

希少金属なので材料費も高く加工の手間も掛かる鋼材ですが、やっぱり良いモノだなと思って作っています。

f:id:kikuiscissors:20190329085110j:plain

ですが、刃物は鋼材としての良し悪しだけで測れるものでもなく、

「切れ味というだけあって、“味”の好き嫌いもある」ものだと思います。

当然、コバルト基合金にはコバルト基合金の、ステンレスにはステンレスの、

それぞれの切れ味があります。

また、鋼材による切れ味の違いも大切ですが、その特徴を分かって仕上げているかどうか、

作り手の姿勢も問われるのが刃物です。

 

それぞれの鋼材の利点、各メーカーの仕上げの違い、価格とのバランス、

そして最終的には切れ味・使い心地がしっくりくるかどうか。

総合的に判断してキクイのコバルトシザーを選んでいただければ、それこそ作り手冥利に尽きます。

 

以上、今回はちょっとカタくて取っつきにくい記事でしたが…

鋼材を知る事でハサミ選びの一助になれば幸いです。